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《特別対談》「守山・琵琶湖の可能性と未来」守山市自転車特命大使・三船雅彦氏×LAKE BIWA TRIATHLON実行委員長・田中信行氏×守山市・森中市長

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守山市が掲げる「琵琶湖アドベンチャーツーリズムの発着地 守山」とは、滋賀県・琵琶湖岸の湖岸エリア振興と観光誘客を目指した、官民連携のプラットフォームです。

そんな「琵琶湖アドベンチャーツーリズムの発着地 守山」を目指すべく、琵琶湖岸で様々な事業活動を行う事業者へ「湖岸VOICE」シリーズと題したインタビューを全10回にわたって実施してきました。

今回は特別対談として、守山市自転車特命大使の三船雅彦氏、LAKE BIWA TRIATHLON実行委員長の田中信行氏と、守山市・森中市長の対談を実施。その模様をお届けします。

(取材 = 株式会社COMARS 吉武[琵琶湖アドベンチャーツーリズムの発着地推進業務受託業者])


守山市では2018年より、自転車を軸とした観光振興・自転車を活用したまちづくりの推進にあたって、専門的知識・豊富な経験・人脈などを活かしたアドバイスを受け、守山市の自転車政策のPRを行うため、守山市自転車特命大使制度を設置しています。2017年には三船さんが就任し、2021年には田中さんが自転車特命大使に任命され、現在も精力的に守山市の自転車政策を全国にPRし、自転車を活用したまちづくりに協力いただいています。自転車、トライアスロンなども非常に盛り上がりを見せ、2023年に第3回大会が行われた「LAKE BIWA TRIATHLON 2023」では、森中市長もリレー選手として参加。地域内外で「ビワイチの発着地 守山」「自転車のまち守山」という認識が広がってきています。

まずはお三方それぞれが考える、守山・琵琶湖の魅力から語っていただきたいと思います。

森中 やっぱり琵琶湖は日本一の湖で、これほど存在感のある湖は他にはないと思ってます。海外と比べてみると、ヨーロッパだと湖畔でゆっくりできるリゾート地のイメージがあるのに対して、守山の湖岸には琵琶湖マリオットホテルもありますが、いわゆるリゾート的な活用も良いのですが、親子連れや観光でも、買い物に来たついでにふらっと寄れるという、立地の良さと気軽さを兼ね備えているのが大きな特徴であり、魅力だと思います。

三船 僕は元々滋賀の出身ではなくて京都の城陽の出身なのですが、小さい頃から地理や歴史がすごく好きで、この滋賀県のエリアは日本の中でも有数の稲作地帯だと思うんです。鈴鹿山脈などから水田に水を流して、それが琵琶湖に流れ込んでいる。こんな大きな水田地帯がないと、多分天下は取れなかったと思うんです。京都が長らく都としてあったのは、僕は滋賀の豊かな水田地帯と湖があったからこそじゃないかと思うんですよね。実際、滋賀は寺社仏閣の数が多くて日本一の数を誇りますし、天候に左右されやすい農業を神頼みで祈っていたり、お寺に納めるお米があったから、ということから関係していると思います。そんな豊かな自然がある滋賀・琵琶湖はすごく魅力的で、物質的な豊かさではなくて「本当の豊かさ」が滋賀にはあると思います。田園風景だったり、琵琶湖の夕陽だったり、そういったものを求めて滋賀にビワイチに来る人もきっと多いですよ。

守山市自転車特命大使 三船雅彦さん

田中 実はトライアスロンの大会をやるまでは琵琶湖には元々あんまり興味がなかったのが正直なところで、学生時代京都にいて、そのまま東京に行ってしまいました。琵琶湖のイメージは、トライアスロンをやっていて「アイアンマンジャパン」発祥の地というところだけでした。それから今になって「LAKE BIWA TRIATHLON」を開催をするにあたって琵琶湖に通うようになって、毎日違う顔を見せる琵琶湖の美しさや、知らなかった琵琶湖の名産品にとても感動しました。でも私と同じように、多くの人がこの琵琶湖の魅力に気づいていないですよね。例えば日本では”マウントフジ”は世界中の人が知っていますが、”レイクビワ”は実際ほどんど知られてない。富士山は日本の象徴になっていますが、琵琶湖ももっと知られてもいいと思うんです。大会主催者の役割の一つとして、こういった琵琶湖の素晴らしさをどんどん伝えていくことも使命だと思って、琵琶湖の良さもアピールしていきたいです。

LAKE BIWA TRIATHLON 2023に出場した森中市長

森中 今年私も参加した「LAKE BIWA TRIATHLON」で改めて思いましたが、守山は湖岸からしばらく遠浅ですよね。風も西から東に吹いてくるので、安全面で言うと沖に行かないですし、親子連れには安心して遊べる環境があるなと思いますし、景色も夕陽がとても綺麗です。これは守山や琵琶湖東岸の強みですよね。立地的にも琵琶湖大橋があって大津や京都からもアクセスが良く、昔から関西と中部地方の中間で交通の要衝だった場所です。こういった強みをしっかり認識して、”気軽に立ち寄れる琵琶湖”というのを生かしてけないかなと思ってます。

三船さん・田中さんは、守山市自転車特命大使として様々な活動をしていただいていると思いますが、他の自治体と守山で違う部分や特徴的なところはありますか。

田中 数十年商社やメーカーをやってきて、行政の方と関わる機会はこれまでなくて、大会開催で初めて関わりました。守山市の方はすごくパワフルで、これは他の自治体では感じなかったことでした。何かを新しく始めるときに、当然行政との連携は必要だと思うんですが、守山市はその土壌がそろっていて、人の面でも環境の面でも、何かをやるときにも官民で連携しての事業がしやすいと思います。LAKE BIWA TRIATHLONは2021年にスタートしましたが、守山市でなければ始められなかったと思います。

LAKE BIWA TRIATHLON実行委員長 田中信行さん

三船 様々な自治体で自転車政策に関わらせていただいていますが、守山はすごく”やりたいこと”と”できること”のバランスが良いんだと思います。目標として掲げる理想が高すぎて、現実的にはできないというのはありがちだと思うんですが、守山市での自転車政策を例にすれば、「ビワイチの発着地 守山」「自転車を軸にしたまちづくり」と目標がわかりやすくて、様々な事業ができていて、とてもバランスが良いと思うんです。私が携わらせていただいた「ビワイチ推奨コースマップ」(*2023年7月に配布終了)も、守山をスタート・フィニッシュにして滋賀・京都のサイクリングコースを紹介しているのですが、滋賀全体を回ってもらいながら、結果的に守山の魅力を提供している。このマップも6年間で8万部配布され、大変好評いただきました。もちろんハードとして自転車道の整備などもされていますが、こういった政策もあって、結果的に「自転車のまち守山」のイメージがだんだんとついてきているんだと思います。

三船さんが監修した「ビワイチ推奨コースマップ」(2023年7月に配布終了)

森中 もちろんサイクリストさんもそうなんですが、親子連れや友達同士でもっと気軽に自転車に乗ってもらえる環境も必要なのかなと思うんです。自転車政策の展開としては悩ましい部分もあるんですが、”気軽に参加”というのがキーワードだと持っていて、守山のように若い親子が多い町だと、親子でなにか体験しに行こうとも思ってもらえることが大事なのかなと思っています。このサイトのトップの映像でも、サップやヨガ、自転車といった琵琶湖での体験も、いつでも気軽にできるかと言えばそうではないんですよね。そういった琵琶湖での様々なアクティビティを”気軽に”できるようになったら、午前中はちょっと1,2時間琵琶湖で遊んで、午後はゆっくり買い物してというような、守山・琵琶湖で楽しむスタイルを定着させられるのではないかと思います。

三船 守山のすごいところは、青の矢羽がついた自転車道が街中にあって、そこをちゃんと自転車が走ってて、車の人もきちんと止まって譲るということが浸透しているところだと思います。これは長い間自転車施策をやってきて、啓蒙してきた結果ですよね。これを続けていくことで、本当の意味で「自転車のまち」になることができますし、市長の仰るように裾野を拡げて「気軽に」自転車に乗ることが当たり前になってくると思います。

田中 トライアスロンの話ですが、レースを実際に開催してみて、やっぱり地元の理解がないとできないなと体感したんです。トライアスロンという競技自体、まだ知られていないので、まずは知ってもらうことが大事です。そして地域を使ってレースをさせていただくので、交通規制があったりして迷惑をおかけする部分ももちろんあります。だからこそ地元の魅力を情報として発信をして地域に貢献しながら、地域の方に選手を応援いただいたり、スポーツをしてみようと意識をしていただいたりという、競技の側面だけではなくて、地域を巻き込んでのプラスの循環をつくりたいと思っています。

対談に応じる田中さん・三船さん

守山市では「琵琶湖アドベンチャーツーリズムの発着地・守山」として、自転車にとどまらず、様々な琵琶湖でのアクティビティやツーリズムの拠点となり、湖岸エリアを中心とした地域振興を目指しています。これからの守山にはどんなことが必要でしょうか。

三船 例えば人がたくさん来るのを目指して新しいことをするのはとても労力がかかると思うんです。逆に、いまの守山のポテンシャルをどれだけ高く見せていけるかというところが、アドベンチャーツーリズムのポイントになると思っていてます。琵琶湖に来て、湖の美しさと水の綺麗さ、そしてそこで楽しめる様々なアクティビティで満喫してもらったり、守山の街でも守山宿を中心に中山道の昔ながらの宿場町としての歴史を感じてもらったりと、まだまだ発信やアピールで守山の良さは伝えていけると思います。

田中 情報発信はやはり口コミが一番だと思うんです。トライアスロンのレースでも、琵琶湖はアイアンマンジャパン発祥の地で、トライアスリートにとっては聖地なんです。海外の方ももちろん集まりますし、そうやって琵琶湖に来ていただいた際に、ホテルに泊まって街で美味しいものを食べ、琵琶湖でのアドベンチャーツーリズムを楽しんでもらってと、様々な体験をしてもらって、そういう個人個人が発信をすることで、もっと守山の良さが具体的な感想や想いを持って伝わると思います。そういう意味で、まずは守山に来ていただく方に向けた「おもてなし」や歓迎ムードの演出は必要なんじゃないかと思います。

今日の対談を踏まえてこれからの守山のあり方をどのように考えておられますか。

守山市 森中高史市長

森中 ゼロから作るって大変ですし、良いものができるとも限らないので、そういう中で、今あるものをよりどう磨いていくかとか、利用しやすいようにするかという観点が大事なんじゃないかと思います。我々は日本一の琵琶湖を持ってますので、もっとしっかりその資源を活用していくということと、様々なアクティビティに参加した方が、自然に発信をしてもらう中で、いい循環が生まれてくるのかなと思います。今も湖岸緑地などで、トライアスロンも含めてテントサウナやサップ×ヨガなど、民間のイベントもたくさん開催いただいていますが、その参加される方がまた発信もしてくれる。行政がそれをバックアップしてサポートできる体制を整えて、守山だったらやりやすい、守山だったら楽しいと思っていただけるようにしたいと思っています。守山だからこそのアクセスの良さ、琵琶湖の環境も活かしながら、海外の方や県外の方が楽しめることももちろんですが、地元の方々にも楽しんでいただける、良い循環を作っていくことが大切だと思っていますので、今さまざまなところで動いている「点」の取り組みをもっと線で繋いで、面になってやっていくことが必要だと思いますし、頑張っていきたいと思います。

三船 雅彦 氏(みふね・まさひこ)

株式会社マッサエンタープライズ代表取締役
高校卒業後、単身でオランダへ自転車留学。94年にプロロードレーサーとなり、99年にはツール・ド・フランドルに日本人として初めて出場。全日本シクロクロス選手権の制覇のほか、国内外レースに1500回以上出場し、200回以上の入賞実績あり。引退後、イベントの運営、講演会、テレビ解説や執筆活動など他分野で活躍されるとともに、日本体育協会スポーツ指導者(自転車競技)の資格を有し、愛媛国体自転車レースの愛媛県外部コーチやシクロクロス日本代表チーム監督にも就任。現在も全国でイベント、講演会、交通安全スクール等で活躍。2018年より守山市自転車特命大使に就任。

田中 信行 氏(たなか・のぶゆき)

LAKE BIWA TRIATHLON実行委員長/CEEPO International Co.,Ltd. 代表
同志社大学卒業後、株式会社大沢商会でスポーツ、アパレル部門に18年間従事し、1995年リーボックジャパン株式会社に転職。2002年トライアスロンバイク専門メーカーとして「CEEPO International Co.,Ltd.」を台湾に設立、現在世界20か国以上で販売。スポーツやアパレル事業に携わるかたわら、37歳でトライアスロンをはじめたことがきっかけで、世界中のトライアスロン大会に参加。現在は、日本国内の自転車業界、自転車仲介事業者や販売店のみならず、様々な企業や投資家らとのネットワークをつくり、自転車やトライアスロン、さらにはスポーツの文化を広めている。2021年、琵琶湖を舞台としたトライアスロン大会「LAKE BIWA TRIATHLON」を主催。2023年には第3回大会を10月に開催した。

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