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ピエクレックス × ヤンマー 守山で広がる企業連携

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滋賀県守山市では地方創生の柱として「起業家の集まるまち 守山」を掲げ、多様化する社会課題解決のため、市内外のスタートアップをはじめとする民間企業との官民連携による民主導の地域活性化・持続可能社会への貢献を目指しています。
また、琵琶湖に面する立地を活かした琵琶湖岸の湖岸エリア振興と観光誘客を見据えて「琵琶湖アドベンチャーツーリズムの発着地 守山」として、官民連携による持続可能な地方創生の実現を目指し、官民連携、そして民間の事業者同士の連携や横展開を進めています。

今回は、そんな事業者同士の連携事例として、株式会社ピエクレックスと、ヤンマーグループとの連携をご紹介します。

ヤンマーサンセットマリーナ総支配人の三石孝さん、株式会社ピエクレックス 経営管理部ブランディングチーム マネージャーの井上貴文さんにお話を伺いました。

(取材 = 株式会社COMARS 吉武[守山市・湖岸振興に向けた官民連携受入体制推進業務受託業者])

琵琶湖で初開催のドラゴン級国際ヨットレース
「BIWAKO DRAGON INVITATION 2024」

「BIWAKO DRAGON INVITATION 2024」レースの様子

2024年11月21日〜24日、琵琶湖で初開催となるドラゴンクラスの国際ヨットレース「BIWAKO DRAGON INVITATION 2024」が、守山市のヤンマーサンセットマリーナをベースに開催されました。一般社団法人琵琶湖サンセットヨットクラブが主催する本大会は、ヤンマーホールディングス株式会社、ヤンマーコーポレーション株式会社、ヤンマーマリンインターナショナルアジア株式会社、日本ドラゴン協会が共催し、日本、ヨーロッパ、オセアニア、アジアの13カ国から約30チーム・100人が参加しました。

世界各国から30チームが参加した

開催地となったヤンマーサンセットマリーナは、グループ唯一のマリーナです。ヤンマーホールディングス株式会社およびヤンマーコーポレーション株式会社は滋賀県と2024年5月に包括的連携協定を結び、それに基づく観光・地域振興の取り組みの1つとして開催されました。

ヤンマーといえばエンジンですが、ヨット向けのエンジンでは世界トップシェア。しかし今回開催したドラゴンクラスのヨットではエンジンは付いておらず、自然と向き合いながら操艇するレースですが、ヤンマーは、自然のエネルギーである「風」を使ったセーリングというスポーツに、「人」と「自然」の関わりの本質を見出し、セーリングスポーツの普及と発展もサポートしているとのことです。

レースの様子

ヤンマーサンセットマリーナの三石さんは「ヤンマーグループでは”A SUSTANABLE FUTURE”として、人の豊かさと自然の豊かさを両立した持続可能な社会の実現を目指しています。これを実現するためには、テクノロジーに加えて人の力も重要であると考えており、創業の精神でもある”人の可能性を信じ、挑戦を後押しする”取り組みの1つとしても捉えています。今回のレース開催を契機に、将来的にはジュニアの育成などを通じて、ヨット人口が少しでも増えたらいいなと考えています」と話します。

ヤンマーサンセットマリーナ総支配人・三石孝さん

ピエクレックスのウェアが大会ユニフォームとして採用

野洲市に事業所を置き、株式会社村田製作所の完全子会社である株式会社ピエクレックスは、植物由来の原料から生まれた地球に優しい「電気の繊維」で抗菌効果と環境への貢献を両立する新素材「ピエクレックス」を開発し、販売も手掛けています。

守山市のスポーツ推進PRポロシャツの素材に採用されているほか、守山市で開催するトライアスロン大会「LAKE BIWA TRIATHLON」の公式ウェアやフィニッシャータオルなどで採用されています。その横展開として今回、2024年11月に開催されたヤンマーグループが共催する国際ヨットレースの公式ウェアとして採用されました。

採用された公式ウェア

今回の「BIWAKO DRAGON INVITATION 2024」では、ピエクレックスの製品がユニフォームとして採用されました。そのきっかけとなったのが守山市との連携でした。

三石さんは「マリーナが立地する守山市と連携する中で、企業連携室の方にピエクレックスさんをご紹介いただきました。ヤンマーグループでは、コンポスターという生ゴミを肥料に変える機械を製造しており、ご紹介いただいた当時、マリーナへのコンポスターの導入が決まっており、資源循環の取り組みを進めていくところでした。ピエクレックスさんとお話させていただくなかで、目指したい方向性が同じだと意気投合し、今回の大会でも環境への配慮をアピールできると思い、採用させていただきました」と振り返ります。

レース前にはピエクレックスからユニフォームの紹介を競技チームの皆さんにも紹介し「英語でのプレゼンでは、抗菌作用があって、こうやって衝撃を与えるとばい菌を殺すことができます、とデモをしながら話して盛り上がっていました。内容も伝わったようで、関心も高かったです」と井上さんは話します。

資源循環の実現を目指しタッグ

ピエクレックスでは、植物由来の原料から生まれた電気の繊維「ピエクレックス」素材の提供に留まらず、それらが最終的に土に還り、さらには堆肥として次の植物を育てるという、循環インフラ「P-FACTS」の実現に取り組んでいます。

株式会社ピエクレックス 経営管理部ブランディングチーム マネージャー・井上貴文さん

ピエクレックスの井上さんは「わたしたちが取り組んでいるP-FACTSの取り組みでは、再利用できる製品を回収して堆肥化し、最終的に農業や林業での堆肥利用までを実施しています。我々のウェアを導入していただく上で、資源循環までを実現するためにはコンポストが必要なのですが、ヤンマーさん自身がコンポスターを製造しており、マリーナにもすでに設置を決めておられたのは、我々のウェアを導入していただきやすい環境もすでにお持ちだったと思います」と話します。

ヤンマーサンセットマリーナに設置されているバイオコンポスター

また、ヤンマーサンセットマリーナでは環境に配慮する取り組みを推進し、ビーチ・マリーナ・観光船舶に特化した国際環境認証「ブルーフラッグ」の取得を目指しており(取材時点で申請中)、コンポスターの導入もその取り組みの1つでした。

三石さんは「タイミング的にはヤンマーの全体のサステナブル社会への取り組みと、マリーナの環境認証取得を通じた環境への配慮の取り組みの 2 つが重なったということですね」と語りました。

連携のその先に

ヤンマーサンセットマリーナ内にある農園
コンポスターで堆肥化した肥料が使われている

最後にお二人に、これからの取り組みをお聞きしました。

三石さんは「今回このレースでは、環境に配慮した取り組みをアピールするためにピエクレックスさんの製品を採用させていただきましたが、今後は我々マリーナのスタッフのユニフォームでも採用させていただきたいと考えています。マリーナのスタッフが着用して、廃棄するときには、マリーナのコンポスターに入れて肥料に変えて、また畑に返すというような循環の仕組みを作りたいと思っています」と話しました。

井上さんは「まず我々はまだ設立からまもなくて、実績をしっかり作っていく段階の中で、やはり大手の企業さんにご採用いただけるのは、すごく大きな実績になりました。我々はBtoBとBtoCの両方をビジネスとして行っていますが、BtoBを進めていく上では、ヤンマーさんに採用いただいたことは、他の企業さんにとってもポジティブな影響を与えていくんじゃないかと思っています。ゆくゆくは、繊維製品は日本だけでなく、海外での展開も視野に入れていますが、一方で我々の繊維製品だけではなく、繊維を堆肥化する資源循環を行うインフラの整備をまずは日本国内でしっかり取り組み、社会に浸透させていきたいと思っています」と展望を語りました。

守山市で生まれた新たな連携の今後にも注目です。

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