「楽しさ」の先に、環境貢献がある未来へ。SUPイベント×ピエクレックス×守山市が挑む、新しい地域循環のカタチ
滋賀県守山市では地方創生の柱として「起業家の集まるまち 守山」を掲げ、多様化する社会課題解決のため、市内外のスタートアップをはじめとする民間企業との官民連携による民主導の地域活性化・持続可能社会への貢献を目指しています。
また、琵琶湖に面する立地を活かした琵琶湖岸の湖岸エリア振興と観光誘客を見据えて「琵琶湖アドベンチャーツーリズムの発着地 守山」として、官民連携による持続可能な地方創生の実現を目指し、官民連携、そして民間の事業者同士の連携や横展開を進めています。
そんな官民・事業者同士の連携事例の1つが、2025年9月28日に守山市で4回目の開催となったイベント「SUP×DAY×BEACH」での、株式会社ピエクレックスとの連携による、”サステナブルなイベント”を目指した取り組みです。
今回は、イベントを主催したB.S.Yプロジェクト実行委員会・LIFE LINES PRODUCT代表の岡崎健一さんと、株式会社ピエクレックス セールスチームの東野愛吏さん・野本千尋さん、そして、両者をつないだ守山市 都市経済部企業連携室の西村祐紀さんが集まり、連携の成果とその先に見据える未来について語り合いました。

2025年9月28日、守山市の第2なぎさ公園で開催された「SUP×DAY×BEACH」は、サップ体験・ヨガなどウェルネス・フード・マルシェなどを中心とした体験型イベント。大人から子供まで、全年齢層の方に琵琶湖を楽しんでもらうことを目指したこのイベントは、今回で4回目の開催となり、一日で2400人以上の方が来場し、県内だけでなく県外からも多くの来場者が訪れた。サップを中心とした琵琶湖でのアクティビティだけでなく、むかし遊び体験、ふれあい動物園など子供たちが楽しめるコンテンツのほか、ヨガ体験や焚き火カフェ、フードトラックやマルシェといった、大人も楽しめる企画が勢揃い。サップやヨガのファン層だけでなく、子供たち、ファミリー層、シニアも参加でき、1日中楽しめるイベントとなった。
西村(守山市): まずは9月28日の「SUP×DAY×BEACH」、本当にお疲れ様でした。大盛況でしたね。
岡崎(B.S.Y): ありがとうございます。実は前日が強風で、SUPが出せるかギリギリの状況だったんですが、当日は奇跡的に風が止んで晴れました。イベントが終わって撤収した瞬間に雨が降ってきたので、まさに「天に愛された」タイミングでした(笑)。
東野(ピエクレックス): 私も当日の様子を写真で拝見しましたが、すごい熱気でしたね。子供から大人まで、みんなが笑顔で。

岡崎: おかげさまで大盛況でした。県内外から多くの方が来られ、特にサップ体験は朝イチで全枠埋まるほどの人気でした。
僕らのイベントは、琵琶湖(湖上)だけじゃなく、陸上のマルシェやヨガも含めて「全部欲張りに楽しむ」がコンセプトなんです。いわば「楽しさのちゃんこ鍋」。
今回、そのスタッフ全員にピエクレックスさんのTシャツを着てもらいました。湖岸という自然に近い場所で遊ぶイベントなので、環境に配慮した素材を身につけることは、スタッフの意識統一にもすごく良かったです。
株式会社村田製作所の完全子会社である株式会社ピエクレックス(滋賀県野洲市)は、植物由来の原料から生まれた地球に優しい「電気の繊維」で抗菌効果と環境への貢献を両立する新素材「ピエクレックス」を開発し、販売も手掛けている。守山市のスポーツ推進PRポロシャツの素材に採用されているほか、守山市で開催したトライアスロン大会「LAKE BIWA TRIATHLON」の公式ウェアやフィニッシャータオルなどで採用。昨年にはヤンマーグループが共催する国際ヨットレースの公式ウェアとしても採用され、守山の中でも横展開が進んでおり、今回のイベントでもスタッフウェアとして採用された。

西村: 今回、守山市が間に入ってピエクレックスさんを紹介させていただいたわけですが、単に「Tシャツを提供します」という話以上に、岡崎さんがピエクレックスの「思想」に共感されたのが印象的でした。
岡崎: そうなんです。今日一番聞きたかったのはそこなんです。ピエクレックスさんは、単にTシャツを売りたいアパレルブランドなのか、それともその先にある「環境への思想」を広めたいのか。
「服を土に還す」インフラを作る挑戦

東野: 私たちの本質は、完全に後者です。 ピエクレックスの特徴は2つあります。1つは「電気」。植物由来のポリ乳酸という素材を使っていて、人が動く(繊維が動く)エネルギーで微弱な電気が発生し、菌の増殖を抑制します。洗っても効果が落ちないので、汗をかくイベントスタッフの方にはぴったりなんです。
岡崎: なるほど、だから臭わないんですね。
東野: そして2つ目が「環境」です。私たちが本当にやりたいのは、製品を作ること以上に、使い古された製品を回収し、土に還す循環インフラ「P-FACTS(ピーファクツ)」の実現です。 回収したTシャツを裁断し、発酵させてコンポストで堆肥にする。その堆肥で野菜や綿花を育てて、また製品に戻す。この「循環の輪」を実現したいと考えています。

岡崎: そのストーリーが素晴らしい。 僕もイベントで「来た時よりも綺麗に」をモットーにしていますが、参加者に正面から「環境を守ろう」と言っても、なかなか響かないんですよ。 大事なのは順番。「最高に楽しんで遊んでいたら、結果的に環境にも良かった」というのが理想なんです。だから、ピエクレックスさんの「着て、動いて、最後は土に還る」というストーリーは、僕らのイベントの世界観にすごくハマるんです。
「回収」をいかにエンターテインメントにするか
西村: 今回の実証実験を経て、次はどう「循環」を形にしていくかですね。
岡崎: 課題は「回収」ですよね。イベントが終わった後、どうやって参加者に服を返してもらうか。ただ回収ボックスを置くだけじゃ、人は動かないと思うんです。 だから、そこもエンタメにしたい。
SUP×DAY×BEACHのイベントでは「Trash or Treat(ゴミを拾ったらお菓子をあげる)」という企画をやってるんですが、それと同じように、Tシャツを返却ボックスに入れたら、その堆肥で育った野菜と交換できるとか。回収した先の姿が見えるような演出ができたら、いいですよね。
東野: それ、すごくいいですね! 実は毎年P-FACTS製品を活用いただいているイベントでは、使い古された製品の回収が少しずつ始まっており、回収にご協力いただいた御礼にお野菜をお渡しし、P-FACTSの循環を身を持って体験いただいています。実際に自分が着た服が野菜や次の資源に変わる体験は、子供たちにも分かりやすく、環境教育としてもすごくいいと思います。
岡崎: 「バイバイ、またね」って言いながらボックスに入れる儀式があってもいい。寂しいけど、次は美味しい野菜になって帰ってきてね、みたいな(笑)。 そうやってプロセスを見せることで、初めて「循環」が自分ごとになるんだと思います。

西村: 守山市内には、立命館守山中学校・高等学校やヤンマーサンセットマリーナなど、すでにピエクレックスさんの堆肥を使ってコットンや野菜を育てているところもあります。イベント会場で回収して、市内の農地で堆肥化して、また次のイベントの食として還元する。そんな「地着・地消・地循」のモデルができそうですね。
万博、そしてRFIDが繋ぐ「守山の周遊」
東野: もう一つ、これからの展開として提案したいのが「テクノロジー」との融合です。 私たちは村田製作所グループなので、”電子部品”の会社です。その技術を活かして、私たちのTシャツなどのアパレル製品、タオルやハンカチなどに、超小型の「RFIDタグ(電子タグ)」を埋め込むという技術を進めています。2025年大阪・関西万博でもグッズなどで一部実証実験を行っていたんです。タオルなどに縫われた、RFIDタグを埋め込んだブランドタグにスマートフォンをかざすと、購入者限定の動画コンテンツや抽選などの特典を楽しめるというものです。
西村:ユニクロさんの製品タグにもついてる、無人レジみたいなものですよね。

村田製作所のNFC対応RFIDタグをタオル本体に縫い付けてあるブランドタグ内に封入している
東野:そうです。実は、2027年に横浜で開催されるGREEN×EXPO 2027(横浜花博/2027年国際園芸博覧会)では、1万人を超える方の運営スタッフやボランティアの方のユニフォームで、当社の植物由来の素材で統一し、P-FACTSによる”着る循環”の社会実証を大規模に行うことが決まっています。
岡崎:すごい規模ですね!

東野:はい。そこでは大量のウェアが回収され、資源循環されることになります。その前段階として、ここ守山市で「イベントにおける循環モデル」をしっかり作り上げたいんです。
そこからさらに発展させて、例えば、万博会場でピエクレックスのタオルを買った人が、それを守山のイベントに持ってきてスマホでかざすと、サップ体験の割引クーポンが出たり、観光マップが表示されたりするようなことを考えています。 タオルそのものが、観光の「パスポート」になるんです。
岡崎: それはめちゃくちゃ面白い!とてもワクワクしますし、可能性しかないですね。「そのタオルを持っていたら仲間」みたいなコミュニティ感も生まれるし、何よりも「循環」というストーリーが、守山の新しい観光資源になる。 僕のイベントは「楽しさ」が入り口ですが、そこにピエクレックスさんのようなしっかりした「想い」が入ることで、イベントの格が一段上がる気がします。

西村: 行政としても、2027年には滋賀県デスティネーションキャンペーン(滋賀DC/JRグループ6社による大規模観光キャンペーン)が控えているので、万博からの誘客ツールとして非常に魅力的です。「環境にいいタオル」というだけでなく、「持っていると守山で楽しいことができるタオル」になれば、普及のスピードも一気に上がりそうです。
官民連携だから描ける「セッション」
西村: 今日の話を聞いていて思ったのは、岡崎さんのようなチャレンジャーと、ピエクレックスさんのようなイノベーター、そして我々行政が、すごく良いバランスで連携できているなということです。 行政だけではできない発想を、民間みなさんが形にしてくれる。
岡崎: 僕も、守山市さんの熱量にはいつも助けられています。行政特有の壁を感じさせないというか、「一緒に面白がりましょう」というスタンスでいてくれる。だから僕らも「守山でならやりたい」と思うんです。 一回きりのイベントではなく、これが日常のカルチャーになるまで、続けていきたいですね。

西村:「成功しているから応援する」のではなく、「常にチャレンジしているから応援する」。それが守山市のスタンスです。 今日出た「循環のエンタメ化」や「地産地消のストーリー」。一つずつ形にして、守山から世界に発信できるモデルを作っていきましょう。
東野:私たちも、単に製品を使ってもらうだけでなく、守山市というフィールドで「循環の実証」を一緒に作り上げていきたいです!
岡崎: ぜひ、やりましょう!
予定時間を大幅に超えて盛り上がった今回の対談。 単なる「イベントの振り返り」にとどまらず、技術とエンターテインメントが掛け合わさることで、環境活動が「ガマン」から「ワクワクする体験」へと変わる瞬間を目の当たりにした。 2027年のGREEN×EXPOや滋賀DC、そしてその先の未来に向けて、守山市の湖岸から新しい風が吹きそうだ。
(取材 = 株式会社COMARS 吉武[守山市・湖岸振興に向けた官民連携受入体制推進業務受託業者])
